
うつ病等の精神疾患に罹患した報告があがってきたときに、人事労務部門がまず確認しなければならないのは業務起因性の有無。業務起因性の判断する労働基準監督署の判断の拠り所となる通達・指針や労災認定率を見てみると、業務起因性は認められにくい傾向にあると言ってよいでしょう。 |
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精神疾患の業務起因性の判断基準について |
心理的負荷による精神障害の労災申請については、平成11年9月14日付通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務場外の判断指針ついて」に基づき業務起因性の判断が行われていましたが、平成23年12月26日通達で新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が公表されています。平成23年12月26日通達は、従来から労働基準監督署において用いていた業務起因性の判断基準を改めて通達として発した内容となっており、とりわけ判断基準が厳格化されたわけでも緩和されたわけでもないようです。 「心理的負荷による精神障害の認定基準について」において、長時間労働がある場合の評価方法として、「160時間」「120時間」という数字が見られるように、業務起因性が認定されるには、かなり高い基準が設定されていることがわかります。 |
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精神疾患関連の診断書が出てきたら業務起因性の可能性があるかどうかを検証する |
精神疾患関連の診断書が出てきたら、まずは業務起因性の可能性があるかどうかを検証します。平成23年12月26日通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」を参考に、”極度の長時間労働””出来事としての長時間労働”の有無について確認します。業務起因性がほぼ確実に見込まれることがなければ、私傷病として対応します。また、平成23年12月26日通達では、「@認定基準の対象となる精神障害かどうか」において、ICD-10第X章「精神及び行動の障害」分類を用い業務に関連した発症する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)などといっています。特に昨今取り上げられることの多いパーソナリティー障害(F6)は生来的な個人の性格によるもので業務起因性の可能性があるとはいわれていないようです。 | |
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復職の可否を検討する上でも、主治医や産業医から得た情報を利用する上でも、会社側が休職とする正しい理由を知り、休職に入る段階で正確に本人に伝えてこくが必要です。休職の理由を「病気だから」としてしまうと、復職基準、基準へのあてはめ、医師とのやり取り、すべてがズレてしまいます。 |

「復職させるべきか」の最終的判断は会社が行いますが、その判断ポイントは意外なところに隠されています。大切なことは、最終判断までにどようような意図を持ってどのようなプロセスを踏むのか戦略的ストーリーをもって対応することです。 |
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復職の基準は「労務提供できる」ようになること |
労働契約上の労働者の義務は労務提供することです。労務の提供は権利ではなく義務です。従って、復職の基準は「労務提供ができる」ことに尽きます。どの職務について「労務提供できる」かは、労働契約(約束)で当該労働者が求められている職務についです。つまり、現職基準が妥当します。 厚生労働省発表の『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(平成21年3月改訂)が「『まずは元の職場への復帰』の原則」を強く説く以上、休職前の現場に戻すことを前提に判断します(現職基準)。職場要因と個人要因の不適合が生じている場合であっても、同手引きは配置転換を積極的に勧めていません。 | |
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復職判断する際の資料は労働者側に提出責任がある |
復職可否判断は、解雇猶予期間満了に伴い労働契約終了という効果を生じさせるか否かの労働契約上の判断となります。そのため、最終判断権者は当然会社にあります。 この判断には、合理性が求められ、判断資料が必要となります。しかし、判断資料の提出責任は労働者にあります。会社に求められるのは判断資料収集の「努力」にとどまります。判断資料は労働者側にあるので、会社は労働者に資料提出を求めさえすれば足ります。 なお、前掲の『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』では、主治医の判断について、「病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちい職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らない」としています。また、「労働者の家族の希望が含まれている場合もある」ともしています。 主治医の診断書を妄信することなく、労働提供を安定的に続けられるか、仕事を任せられるか、周囲の労働者が当該労働者と一緒に仕事ができるのかという視点で、当該企業が判断すべきです。 |
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